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一昔前に比べて、雇用における人材の移動も、だいぶ流動的になってきた感じがしますね。
サラリーマンやOLの方なら、転職の1度や2度ぐらいは経験されているのではないでしょうか?
特に女性の場合は、出産を機に、またはご主人の転勤などをきっかけに、
好むと好まざるとにかかわらず、勤めていた会社を退職されることも少なからずおありでしょう。
そして、子育ても一段落した時期に、今度はパート社員として再就職…

こんなパターンもかなり一般的になってきています。
一方、従業員を雇入れる側の事業主の方も、久しぶりの社会復帰で”やる気満々”なパート社員をぜひとも戦力化したいところでしょう。
中には、優秀なパートの方を正社員に転換させたい…。 そう思う事業主の方も、いらっしゃるのではないでしょうか?

今回は、そんな方にとって朗報となる、奨励金の情報についてお話したいと思います。

パート社員を正社員として転換させたり、正社員と共通の処遇にしたりする制度を適用するとある一定の条件のもとで「奨励金」が支給されます。

奨励金の額は、大企業と中小企業とで違っており、また、中小企業の範囲も業種によって違いがあります。

例えば小売業(飲食店を含む)だと、
常時雇用する労働者が50人以下、または資本金or出資金5000万円以下、のいずれかを満たせば小企業となります。

支給対象となる事業主は、「労働保険の適用事業主」となっております。
会社の規模は問いません。つまり、労働保険に入っている事業所であることが条件となります。
奨励金を受給するためには、以下に挙げるいずれかの制度について、
「全ての事業所に適用される労働協約または就業規則」に
新たに規定されることが必要となります。

また、パートタイム労働者・有期契約労働者、両方またはいずれか一方を対象とすることが必要となります。
(なお、初めて就業規則を作成したり、また就業規則を変更した場合は、労働基準監督署へ届出をする必要があるので注意してください。
届出前に労働者へ適用した場合には、奨励金の対象にはならなくなってしまいます。)


では、どのような制度を適用すると奨励金の支給対象になるのでしょうか? 奨励金を受給するためには、下記いずれかの制度が規定されることが必要です。

1.正社員転換制度

2.共通処遇制度

3.共通教育訓練制度

4.短時間正社員制度

5.健康診断制度

順番に簡単に説明してゆきましょう。

1.の「正社員転換制度」は、わかり易く言えばパート社員・有期契約労働者→正社員へ転換する「試験制度」、になります。
ここで言う「試験」とは、面接試験や筆記試験など、ちゃんと明示されている試験のことを指します。
もちろん試験そのもの以外でも、公平な選考過程がきちんと設けられていたり、
具体的に正社員へ転換させようとする”時期”や、試験制度の”実施時期”が明確になっていることが必要です。

2.の「共通処遇制度」とは、パート社員・有期契約労働者に対し、正社員と共通の処遇制度を設けることです。

3.の「共通教育訓練制度」は、パート社員・有期契約労働者に対し、正社員と共通のカリキュラム内容・時間による教育訓練制度を設けることです。
しかし、ただ「設けた」だけではダメで、ちゃんと決められた数の対象者に実施し修了させないと該当しません。

4.の「短時間正社員制度」は、実際に”短時間正社員制度”を設けます。
ただこちらも「設けた」だけではダメなことは3.と同様で、実際に利用者が出なければ意味がありません

ここで言う「短時間正社員」ですが、定義としては、
「所定労働時間が短いが、正社員として適正な評価と公正な待遇が図られた働き方で、
期間の定めのない労働契約を締結しており、かつ、
時間当たりの基本給・賞与・退職金などの算定方法が、フルタイムの正社員と同等である」

という内容となっています。
なお、在宅にて勤務する短時間正社員制度は対象外となります。
(奨励金の対象となるための短時間正社員制度には、更にいくつかの条件が必要となります)

5.の「健康診断制度」は、パート社員・有期契約労働者に対する健康診断制度を導入することです。

こちらも導入だけではダメで、実際に延べ4人以上に実施しなくてはなりません。
なお、「健康診断制度」とは、

①雇入時健康診断、②定期健康診断、③人間ドック、④生活習慣病予防検診

のいずれかを指します。

経費については①・②については全額を、③・④については半額以上を事業主が負担することが条件となります。

この奨励金を受けるためにはいくつかの「注意すべき事項」がございます。
まず、労働協約や就業規則に導入する制度は、その制度が適用されるための「合理的な条件」が明示されていることが必要です。
この場合の「合理的な条件」とは、実施の要件や基準、手続き、また実施時期などが明確になっていること
また、客観的に確認が可能な条件(人事評価の結果や勤続年数など)であることを指します。

他にも留意事項はございます。
奨励金の詳細や具体的な適用条件・適用に当たっての注意事項などについては、
こちらの
厚生労働省HPのリンクをご参照ください。

なお、この奨励金は、パート1名と正社員1名がいれば、小規模の会社でも受給出来るものとなっております。
また、雇用に関する助成金・奨励金はどうしてもハローワーク経由になってしまうものが多い中、
今回の奨励金に関しては、ハローワークを通していただく必要はございません。
パート社員の正社員化を検討されている事業主の方は、ぜひ検討されてください!

中川会計では税務のみならず、助成金や奨励金など、うまく使えれば事業主の方にとってお得になる情報も随時タイムリーに提供させていただいております。

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