「会計で会社を強くしよう」 「経営は経理から」とかいうソフト会社の宣伝がテレビやネットで流れている。これらに付け加えクラウドサ-ビスをすると、会社の業績があたかも上がるかのようだ。今回は業績アップに会計が直結する場面を特定化あるいは条件を示して、これらの見解の与える誤解を解いてくことにする。

 会計の機能・役割について、会計学会の現会長の伊藤教授「ゼミナ-ル会計学入門」
による説明をまとめると下記のようになる。

①利害関係者の利害を調整する
②利害関係者に情報を提供する
③資源配分の効率化を図る

一番目は経営状況とくに利益を明らかにして、配当あるいは分配可能を巡る株主と債権者の利害や、株主間の利害の調整をするというものである。

二番目は、経営状況を明らかにして、投資家をはじめとする利害関係者に意思決定に有用な情報を提供するというものである。

三番目は、主として経営管理の観点から、会計情報を活用して、業績向上等を図るというものである。

会計の機能・役割は上述のようなものだ。会計は経営の重要な手段であることは疑いようもない。しかし、会計学に携わったものとして言うのは少し残念とはいえ、経営がまず先にありきなのだ。経営が日々行われ、それを結果として会計情報に変換し、最終的に財務諸表を作成・表示していくといったことが会計のプロセスである。このプロセスからすれば、財務会計あるいは制度会計自体には、経営管理の発想による資源配分の効率化を図ること自体は直接的目的にはない。

それではどのような場合に資源配分の効率化を図るという会計の役割が発揮されるのか。予算管理の側面である。予算管理が適切に行われるには迅速で有用な会計デ-タの作成が不可欠になる。ここで資源配分の効率化という役割が関係してくる。たとえば予算が決まっていて月次決算をして、予算と実績の差異を分析して以後の経営活動に原因分析の結果を活かしていければ、まさに資源配分の効率性が達成されていると言えるのである。

ここで問題となるのは二つ。一つは、適切な、管理に資する予算の設定、もう一つは、迅速な予算の設定と実績の計算。これがないと資源配分の効率性は画鋲にすぎない。最初にべたコマ-シャルとの関係は迅速な予算の設定と実績の計算という段階で、ここにきて初めて出てくるに過ぎない。それはパソコン会計、特にクラウドサ-ビスをすれば安全、迅速かつ共時性をもつ情報の作成・伝達が可能だからだ。

とはいうものの、これまでの議論からも明らかなように、会計の三つの機能・役割のうち一つのものの中のその中の一つにすぎない場面でのみ登場してくるにすぎないのが、宣伝にでてくる会計の役割。しかも問題なのは、パソコン会計やそれを利用したクラウドサ-ビスをしたからといって資源配分の効率性あるいは業績アップに直結するものではない。それは、予算管理が適切に行われ、情報が適切に組織全体に伝わり、動機付けがなされてはじめて会計のもつ資源配分の効率性が達成される。要は、経営自体に管理の適切な発想がなければ、また活用方法を適切にしなければ仮にどんなにすぐれた会計システムがあっても意味はないものである。

たとえば、日々新聞を賑わせる一連の虚偽不正報道。たとえば関連会社を悪用した粉飾、原価の設定が適切ではないことによる売価の不当吊り上げ。海外との取引を通じた業績の粉食。これらをみれば会計システムではなく、経営者をはじめとする会計システムを利用する者の、経営意識と経営管理の発想が誤っていると会社の経営活動の実態としての業績が良くなるなどということはないのである。

学問でみるとまずは経営学が先にあってそのあとに会計学があるということなのである。ただし、会社業績をアップさせるという観点からの物言いにすぎないのであって、学問としての優劣を述べているのではないことを付言しておく。


経産省認定 経営革新等支援機関 中小企業庁未来サポ-トセンタ-専門相談員

安 村 税 理 士 オ フ ィ ス

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