近社会保険労務士やコンサルタント等の方が相続セミナ-と銘打ってネット記事を出していまするのをよく見かけます。相続の相談自体は弁護士法、相続税についての相談自体は税理士法に違反します。

今回は税理士法と社会保険労務士法を抜粋して、なぜ税理士法に違反するのか、理論的に解明した後、具体例をあげておきます。

税理士法

(税理士の使命)
第1条 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
(税理士の業務)
第2条 税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和25年法律第226号)第13条の3第4項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
1.税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法(昭和37年法律第160号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法(昭和28年法律第6号)第2章の規定に係る申告、申請及び不服申立てを除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
2.税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第34条において同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)
3.税務相談(税務官公署に対する申告等、第1号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法(昭和37年法律第66号)第2条第6号イからヘまでに掲げる事項及び地方税に係るこれらに相当するものをいう。以下同じ。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)
2 税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。

以下略

上述の法の記載からして税務申告や税務相談は税理士の独占業務なのです。

次に社会保険労務士法をみてみましょう。

社会保険労務士法

(目的)
第1条 この法律は、社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もつて労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする。
(社会保険労務士の職責)
第1条の2 社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。
(社会保険労務士の業務)
第2条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
1.別表第1に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、異議申立書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識できない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。
1の2.申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。

以下略

社会保険労務士法をみてみると、相続業務についてはどこにも記載はあり
ません。ということは、業務として税務相談はできないということは間違い
ありません。ここで言う業務とは、税務相談を反復して実施し、具体的な相
談で報酬をもらうということを意味するものです。

たとえば社会保険労務士としての顧問報酬の範囲とはいうものの、通常よ
り割高で相続税の相談にものるという実体があれば、税理士業務を行って
いるのと同じことになります。また、税金の金額を計算して成功報酬的なコ
ンサル料をもらうことも違反になります。

2008年に判例で、確定申告を社会保険労務士が行って税理士法違反が確
定した事件やコンサルタントの方の脱税指南の判例などよく見られる違反
事例もありましたが、これなど論外です。行政書士、中小企業診断士やコン
サルタントの方も報酬をもらって税金の計算をして、報酬をもらえば、税務
相談に該当するのは自明ですから、当然税理士法違反になります。
訴訟になれば公的資格を失うことにつながりますし、それ以前に自らに課され
た社会的責任を果たしていないということになるでしょう。

したがって相続セミナ-などの中身とその後の経過が具体的に明らかになると
、税理士法違反など多数あると思われます。違法性が軽微だということとも
相まって、訴訟にならないだけです。今は重要なポストにいる国会議員の方も
税理士会と訴訟に発展していました。雑誌で具台的相談にのっていたから
です。各々の分野で専門性を発揮して、「士」業としてのプライドがあるの
なら、税理士法違反事例など少なくなり、納税者に不利益をあたえるといった
ことが減ると思っています。