(「素朴な疑問と複雑な税制 その1」より続く)

 国税当局の解釈の仕方は、一般的には理解しづらい理屈です。最高裁はこの解釈にノーと言ったわけですから、納税者の目線に則った常識的な判断といえるでしょう。この判決は、課税のわかりにくさや不均衡に警鐘をならすと共に、課税のあり方を問うています。今後の還付方法をめぐり国や国税当局は対応を迫られています。財務相は「訴訟対象となった年金型の生命保険で、遺族の請求を前提として、過大に徴収した所得税を還付」する方針を示し、合わせて還付期限の5年を超える分の救済や、その他の類似保険商品も対象にする方針を表明しました。

 冒頭の主婦の意見は実に素朴な疑問であり、なるほどと理解できます。この主婦はもちろん税のプロではありません。相続税申告を受託した税理士も法律に則って申告処理をしていましたが、主婦からの疑問に当初は戸惑ったそうです。しかしよく考えてみると専門家としてもおかしいと思うようになり、今回の裁判に一役買ったのだそうです。

 とかく税法は複雑でわかりづらいものです。法で規定されていてもそれを補完する諸法令や通達が脇を固め、一般人には難解でしょう。そんな中「おかしい」とこの主婦が主張し続けたことには大きな意義があります。(了)

(記事提供者:アタックス 岡田 昌樹)