(「高齢者市場を開拓せよ! その1」より続く)

 今、外食産業大手は、国内での出店売上の伸びが見込めないため、海外とりわけアジアへの出店を加速させています。イタリアンのサイゼリア、カレーの壱番屋などです。しかしワタミは、介護事業を手掛けていることもあってか、国内のこれから増加する高齢者市場に的を絞り、外食で培ったノウハウを武器として高齢者対象の弁当宅配を大きく展開しようとしています。

 報道によるとワタミは、2013年度末までに沖縄を除く全国で宅配サービスを展開する方針で、2010年度の一日12万食から50万食に、年商は約3倍の500億円に伸ばす計画です。筆者は一食いくらで宅配するのか疑問に思い、仮に365日フルに宅配する前提で電卓をたたいてみました。一食280円弱でした。

 ワタミが外食で調達する食材をベースに、この程度の価格で宅配できれば十分値打ちがあるでしょう。ワタミのスタートは居酒屋であり、上場会社にまで成長しました。次に手掛けた介護事業も成功しています。居酒屋、介護に共通するワタミの強みである人材育成を武器にすれば、高齢者向け弁当宅配も成功するのではないでしょうか。ちなみに、ワタミの渡邉美樹取締役最高顧問は、「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」と社員に熱く語っています。

 P.F.ドラッカーは「人口、年齢、雇用、教育、所得など人口構造に関わる変化ほど明白なものはない。見誤りようがない。予測が容易である。リードタイムまで明らかである」と言っています。

 経営者は長期的視点に立って自社の事業の未来を展望し、経営を革新していかなければなりません。ワタミの例にならって、検討してみてはいかがでしょうか。(了)

(記事提供者:アタックス 丸山 弘昭)