政府が4月27日に施行した震災特例法では、個人所得や法人所得、納税手続きに関する税務面からの救済措置が設けられました。国税庁が同法施行を受けてまとめた『東日本大震災により損害を受けた場合の所得税の取り扱い』と題したリリースの中で「事業所得等の取り扱い・農業所得関係」とする項目を設けて、風評被害に対する税務上の救済について見解を示しています。

 風評被害については、納税者からの質問という形で、「原子力発電所の事故に伴う風評被害により、農作物が出荷できないなどの被害が生じているが、この損失も『原子力発電所の事故による災害』に含まれるのか」とする問いに、「いわゆる風評被害の震災特例法上の取り扱いについては、損失の実態や、原子力損害賠償法の補償の範囲、指針に関する今後の議論を踏まえ、その結論と整合的に取り扱うこととなるものと考えている」と回答。
 そして、「原子力損害賠償法の補償の対象とされるなど、地震や津波による事業用資産の滅失と同様の損失と認められるものについては、震災特例法における被災事業用資産の必要経費算入に関する特例等や純損失の繰越控除の特例などが適用されることとなる」と、震災特例法の適用の可能性を認めています。

 また国税庁の担当者は、「原子力損害賠償紛争審査会で風評被害にあった農水産物の損害賠償が議論されているところなので、一般論で風評被害と震災特例法の適用状況はコメントしにくいが、原子力損害賠償法で補償地域の範囲、賠償の範囲が明らかになり次第、柔軟に対応していきたい」とコメントしました。つまり、誰も彼もが風評被害を合い言葉に震災特例法の特例が受けられるということではなく、原子力損害賠償法上の補償対象が一定の適用ラインになると考えてよさそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>