国税庁は、日本証券業協会による文書照会への回答で、電子化していない無記名の公募株式投資信託(タンス受益証券)の配当などの源泉徴収義務者は投信の販売会社であるとの見解を示しました。

 平成20年度税制改正で創設された「上場株式等の配当等に係る源泉徴収義務等の特例(措法9-3-2)」で、従来は投信の受託銀行とされていた配当等の源泉徴収義務者が、平成22年1月1日以後販売会社を通じて支払われるものについては販売会社とされています。今回の文書回答は、平成22年1月1日前に収益計算期間の満了の日が到来し、同日以後に支払が行われたタンス受益証券の配当の源泉徴収義務者を明確にしたものです。
 投信は平成19年1月4日に電子化により原則として振替制度へ移行し、受益証券の交付が廃止されています。しかし、移行に同意しなかった場合や受益証券を顧客が保管している場合など、振替制度に移行していないものも存在しているため、このようなタンス受益証券は配当等の支払いの際、販売会社に持ち込まれることになります。

 税務上、公募株式投資信託の収益分配による配当等の収入時期は、信託期間中のものについては収益計算期間の満了の日、信託の終了または解約によるものについてはその終了などの日とされています(所基通36-4(2))。しかし、無記名のものについては所得税法36条で、その年に実際に支払った額を計上する「現金主義」が採用されています。このため日本証券業協会は、タンス受益証券が持ち込まれた場合の源泉徴収義務者は販売会社になり、また源泉徴収の税率は支払日に適用される法令に従うことになるとの見解を示し、国税庁はこの取り扱いを認めました。
 なおこの照会では、タンス受益証券の配当等の支払いや信託終了、一部解約による償還金等に関する支払調書や支払通知書の交付期限についても、配当と同様、支払日が基準となることなども合わせて認められています。
<情報提供:エヌピー通信社>