近年、国内よりも海外、とくに新興国向けビジネスを伸ばしたいと考える企業が少なくありません。その背景にあるのは、新興国の成長率があります。経団連の研究機関である21世紀政策研究所は、2050年インドは日本のGDP〔国内総生産〕を抜くと予想しています。新興国は、日本企業の生産拠点としての役割だけでなく、すでに日本製品の買い手としてなくてはならない存在になっています。今後も、その新興国の市場に、ビジネスの機会を求める傾向は強まるでしょう。

 その一方で、残念なことに新興国事業に力を入れるものの、現地での売上を伸ばせない企業も少なくありません。そこで、現地で「売れる商品」を効率よく、低コストで開発する手法が求められるようになりました。そのなかで、最近注目を集めているのが「リバース・イノベーション」という開発手法です。第一の特徴は、現地で開発した技術を自国に逆に持ちこみ活用する、文字どおり技術を「リバース」するところにあります。

 そもそも、現地で商品が売れない原因は何か。その一つは、現地のニーズを取り入れていないからです。新興国向け製品は、日本で開発した製品に手を加えるという、国内向けが出発点になっていることが少なくありません。

 現地で売れる商品にするには、現地の生活環境(低所得、停電が多い、高温多湿など)から来る、特有のニーズを取り込んだ製品にしなければなりません。リバース・イノベーションは現地でゼロから設計するため、ニーズに合った商品が生まれ、売上に繋げられる点にメリットがあります。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)