アメリカでは、オバマ大統領の再選が決まったものの、今、大きな財政問題にぶつかっています。それを表すかのように、再選の直後、株式市場では株価の急落が起こりました。その要因となったのが「財政の崖」です。

 問題は、ブッシュ大統領が実施した減税策をはじめ、これまで様々な臨時の不況対策が導入されましたが、その終了時期が、たまたま今年の年末に重なることにあります。このまますべてのプログラムが終了になれば、来年は減税の失効による実質増税に加えて、歳出の強制削減が実施されることになり、これが“崖から落ちるように”景気が悪くなる懸念であることから「財政の崖」と名づけられました。

 この「崖」がもたらす、アメリカ国民への負担はどのくらいかというと、減税の失効に関しては2013年度だけで約4,000億ドルの実質増税だといわれています。たとえば、オバマ政権がリーマン・ショック後に導入した減税ひとつとっても、税率が4.2%から6.2%に戻され、1人当たりで年700ドル以上の負担増になります。もう一つの歳出削減の緊縮を合わせると総額で約5,600億ドル(約45兆円)もの規模になるといわれています。

 このまま対策が進まず、財政の崖が起きれば2013年前半、アメリカ経済は3%弱のマイナス成長に転落すると予想されます。そうなれば最近、明るい兆しをみせていたアメリカの雇用統計は再び悪化する恐れがあります。

 日本経済への影響としては対米輸出減少や円高進行などに及ぶ可能性があり、これが株価下落のほか、企業の設備投資の抑制、雇用の悪化などにつながることが懸念されています。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)