国税庁が7月1日に公表した平成26年分(今年1月1日時点)の路線価(相続税路線価)では、前年と比べて全国的に標準宅地の下落率が縮小し、上昇に転じた地域も増加しました。

 平成26年分(今年1月1日時点)の標準宅地の路線価の対前年変動率全国平均は0.7%減で、25年分の1.8%減から1.1ポイント縮小しました。6年連続の下落ですが、全国的にその下落の幅は縮小しています。前年と比べて上昇したのは、宮城、福島、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪の8都府県。前年分(25年分)でその前年から上昇していたのは宮城と愛知だけでしたが、26年分はこの2県に加えて新たに6都府県が上昇に転じました。

 東京、大阪、愛知の三大都市圏がそろって上昇したのはリーマン・ショック前の平成20年以来のこと。アベノミクスや東京五輪開催などに伴う再開発効果、不動産投資意欲の増進などが後押ししたと見られます。都市部の活況が地方を牽引していく兆候が垣間見えます。

 東北では、路線価が前年から上昇した宮城、福島に加え、岩手についても、対前年で下落したとはいえ25年分の下落率4.0%から26年分は1.7%へと大幅に改善しました。ただ、これら被災3県の数字は単純な景気回復の結果とはいえないでしょう。他県に避難していた住民の帰郷のほか、被災者向け公営住宅の数が不足していることで仕方なくマイホームを購入した被災者の存在を無視できません。特にこうした被災者にとっては、路線価上昇が贈与時や相続時の大きな負担につながってしまいかねないので、注意したいところです。
<情報提供:エヌピー通信社>