中小企業を取り巻く経営環境が目まぐるしく変化する中、事業を承継する後継経営者には、先代経営者から引き継いだ事業を更に発展させるべく経営革新を遂行することが求められます。経営革新を遂行できる能力を形成するために有効と考えられるのが、社外経験を積むことです。社外経験の典型的な例として、後継経営者に他社勤務を経験させることがよく行われています。「他人の飯を食う」という言い方があります。直接的な意味は「他家に寄食して実世間での経験を積むこと」ですが、後継経営者に社外経験を積ませるときにもよく用いられる表現です。

 『中小企業白書2004年版』によると、ほとんどの経営者にとって他社での就業経験が有効であったことが示されています。他社就業が役に立っている内容についてみると「視野の拡大」「社内の管理」「社外との交渉」「人的ネットワーク」などの項目が高い割合を占めています。

 また、社外経験によって得られるものは上記の内容だけに留まらず、後継者が経営革新を遂行するための新たなアイデアを獲得するためにも有効であると考えられます。子会社・関連会社等がある場合には、一定程度実力が備わった段階で、それらの会社の経営を任せてみる方法がとられることがあります。さらに、外部機関によるセミナーへの参加や社会人大学院への通学などは、後継者を自社内に置きつつ、知識の習得や広い視野を育成するのに効果的と考えられます。

 このように、多くの中小企業において、後継経営者の能力形成のために社外経験を積ませる取組みが幅広く行われているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)