私たちの身の回りを見回しても、携帯電話、テレビ中継などの通信事業、天気予報、GPSやカーナビなど、宇宙産業は現代人の生活から切っても切れない状況になっています。世界の宇宙関連の民間産業は、過去5年間で毎年平均10%を超える勢いで成長しており、年間13兆円規模のマーケットにまで成長しています(Satellite Industry Association State of the Satellite Industry Report(2011)より)。

 今まで日本では宇宙研究開発機構(JAXA)がロケット打ち上げ全般を担ってきましたが、文部科学省は一部民間企業への移管する等の対応を行っています。それには3つの理由があります。1つは、ロケットそのものの利用の多様化です。例えば天気予報やカーナビゲーション、災害時の通信や温暖化を監視する地球観測などにも活用されています。2つめは、最先端の開発で得られる技術の転用です。例えば、断熱材を住宅用に改良したり、ロケットの空気力学を応用して高速鉄道に利用するなど、国民生活に直接役立つようなものに使われています。3つめが経済的側面です。日本のロケットが民間衛星の打ち上げを数多く担ったり、ロケット技術を海外に輸出できるようになれば、国内に新しい産業が創出し、周辺の産業も含めて多くの仕事が生まれ、経済的な活動を通じて国民生活に貢献できます。そのため、JAXAはその先の研究に専念する棲み分けをするのです。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)