「第二創業」という言葉があるように、事業承継は中小企業の後継経営者が先代経営者から引き継いだ事業を更に発展させるチャンスにも成りえます。しかしながら、後継経営者が事業を承継した直後に大幅な事業の転換などに取り組もうとして、先代から引き継いだ事業を悪い方向へと導いてしまうケースも少なくありません。

 後継経営者の場合は、先代から承継した既存の企業組織との間に新たな信頼関係を構築することなどが求められます。そのためには先代経営者とは異なったリーダーシップの発揮が求められるのです。後継経営者特有のリーダーシップの特徴は「開かれた経営」、「自立型社員の育成・活用」の2点に整理されます。

 「開かれた経営」についてみると、後継経営者は事業方針等を明確に示し、数値化された経営情報を従業員などと共有しています。そして重要な意思決定については、共有化された経営情報に基づき会議等で組織的に決定しています。「自立型社員の育成・活用」についてみると、後継経営者自らが全てを行うのではなく「従業員に任せる」ことを信条としています。経営者がビジョン、方針、方向性、アイデアを示し、それに従って、従業員が自主的に考え、動く組織づくりをすることによって、従業員からも新たなアイデアが生まれるのです。

 後継経営者は、会社のことを熟知している先代経営者とは異なり、自分よりも会社のことをよく把握している古参従業員などの人心の掌握を図り、取引先、金融機関などの支持、理解を取り付けることで事業を円滑に運営できるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)