企業にとってPM2.5問題はリスクではありますが、一方で空気の「質」に対し消費者の意識が高まることは、ビジネス・チャンスにつながる可能性もあります。工業用の高性能防じんマスクを手掛ける興研は、一般家庭向け市場への参入を決めました。このように、消費者が求める「安心」を提供することで、売上向上につなげる企業の動きもみられます。

 また、中国でのビジネス・チャンスも逃せません。空気清浄機の市場規模は日本以上に大きな伸びをみせ、昨年の100万台程度から、今年は2~3倍に膨らむとみられています。この状況に対応し、パナソニックやシャープは空気清浄機の増産を進めています。また、東芝は新たに中国で家庭用の空気清浄機市場に参入する方針を固めており、各メーカーともこの機会を逃さぬよう市場での攻勢を強めています。
 
 ただし、いくら空気清浄機を設置しても、元となる大気汚染を抑制しなければ問題は解決しません。かつて、日本もいまの中国と同様に公害が社会問題となり、大気質改善に取り組んだ経験があります。そのときに蓄積した技術を中国に提供することは、PM2.5問題の解決に大きく貢献できると考えられます。

 2月、日中両政府は北京で大気汚染を巡る協議を開き、従来からの技術協力に加え、さらなる協力の可能性を検討することで一致しました。ところが、3月、一転して中国は日本からの技術協力に難色を示していると環境省は明らかにしています。

 技術協力がさらに進めば、中国における日本企業の活躍の場がさらに広がりますが、実現まで両国間の動きから目が離せないのが現状です。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)