厚生労働省が公表した最新の「労働経済白書」は、非正規の活用や就業ニーズの変化が起こっている中で、「限定正社員」を増やすことが有効であると提起しています。
 限定正社員は、業務内容や勤務地が限定された社員のことです。待遇は正社員と非正規のパート労働者などの中間に位置します。通常の正社員であれば転勤命令や残業に応じなければなりません。しかし、限定正社員なら子育てや介護といった事情があっても仕事と両立させることができます。また職種変更がないため、各社員の専門性の向上につながると期待されています。

 アベノミクスではこの限定正社員のルール化を狙っており、白書でその普及を促した格好です。
 白書は制度の普及・促進に期待を寄せ、「正規、非正規の二極化を解消し、雇用形態にかかわらず、労働者の希望に応じて、安心して生活できる多様な働き方が供給できる」「非正規雇用労働者のキャリアアップ、より安定的な雇用の機会が確保される」「長時間労働等の課題を踏まえ、ワーク・ライフ・バランスの実現の一つの手段となりうる」としています。

 ただ、企業が限定正社員制度を導入した場合のマイナス面も考慮する必要があります。現在の正社員に限定正社員への転換を求めることも想定されますが、賃金カットなどの危惧で受け容れに消極的になる正社員もいるでしょう。また、閉鎖で勤務地や事業所を消失させる場合の解雇など、ルール作りはいまだ整備されていない状況にあります。顧問先の会社が限定正社員の導入を検討しているケースでは、プラス面、マイナス面の双方を加味したアドバイスが必要になってきます。
<情報提供:エヌピー通信社>