今年の4月に施行された高年齢者雇用安定法の改正では、希望する社員は全員、65歳までの継続雇用をする事が義務付けられましたが、各々の企業が雇用延長に伴いどのような賃金対策をしてゆくのか少しずつ様子が見えてきました。

◆限りある原資を現役と高齢者にどう配分?
 高年齢者の賃金を引き上げるとするNTTグループでは再雇用する60歳以上の社員の年収を引き上げるとしていますが、その分を現役世代の基準内賃金を圧縮するとしています。
 山崎パンでは現役世代とほぼ同じ働き方を求める代わりに収入を増やし、現役世代の賃金を削減して原資とするとしています。
 YKKグループは再雇用制度を見直し定年延長に切り替える代わりに賃金体系を年金給付開始年齢に合わせ整備し、人件費の抑制、人事評価を適性化するとしています。
 賃金制度の見直しは賃金カーブを緩やかに変更します。この方法は中堅社員の賃金の上昇を抑える事になりますので、処遇が不利になる層からは反発も予想されます。他には仕事のポストで賃金が決まる職務給制度に移行する企業も増えています。職務給は仕事内容の難しさや責任の大きさによって決まり、年数による賃金変動は無く、世代間の競争が促しやすくなります。

◆中小企業の高齢者賃金対策
 高年法では雇用延長の方法としてア、再雇用 イ、定年延長 ウ、定年廃止のどれかを選択しなければなりませんが再雇用で有期雇用契約を結び、1年ごとに更新する企業が多いのが現状です。しかし再雇用時に大幅に賃金が減額されて現役時代と同じ働きを求められても高年齢者の意欲をそぐ事も考えられます。だからと言って原資のやりくりも考慮しなければなりませんから賃金改定は一様にするのではなく、今までの働きぶりと今後の期待も込めた額にすることが必要ではないでしょうか。例えば①今後も活躍してほしい社員、②普通にやって欲しい社員、③今一つの働きぶりだと思える社員に分け、一律の率での賃金減額や年金や高年齢雇用継続給付の適用を行うのではなく必要な人材には適切な賃金を出し、③の社員の場合は会社の意向をさりげなく示す等も考えられます。但し賃金を下げる時には本人に説明をした上で行う事が必要になるでしょう。