●甘えの体質が、開発魂を萎えさせる
 物を作る(メーカー)仕事をするなら、大企業の下請け製品だけでなく、「自分で価格を決められる自前の物を作りたい」と、誰でも願うのが本心ではないでしょうか。
 安定経営のためにも、この考え方は正しいと思われます。
 下請け製品は、販売が好調なときには、とてもラクだ。発注する会社の方にだけ顔を向けていればいいから。神経を四方八方に向ける緊張感から救われる。
 しかし同時に、知らず知らずして、自ら市場を開拓する気概も発想も、どんどん退化していく。使わない能力は退化する。ものの十年も下請けに甘んじていると、多くは、この退化病に侵される。
 そこに、発注側が販売不振に陥る事態が起きると、まず下請けにシワ寄せが行くのは当然のこと。価格引き下げの要請が、いちばん多い。
 サントリーという会社は、会社がウイスキーなど洋酒で儲かっているときに、ビールに参入した。しかしビール部門の赤字は、約10年以上も続いた。サントリーはこれを健全な赤字と称していた。本業が儲かっている時期にビールに参入した。赤字でも補完できるからだ。
 いまは立派に、戦略商品のひとつに育っている。
 下請けからの脱出に、臆病な会社の多くは、現在の本業が儲かっているんだから、海のものとも山のものともわからん開発に、何も精力を割く必要はない、という考え方をする。
 本業が儲かっている時にリスクに挑戦する、というサントリーとは、発想が逆なのだ。