平成20年秋のリーマンショック以降、全国的に地価の下落が続いてきました。しかし、4月に国土交通省が発表した今年1月1日時点の公示地価を見ると、ここ数年続いた地価下落の流れが弱まっていることが分かります。一方で、全国の賃貸住宅の空室率は依然として高水準を保っているようです。地価の下落が落ち着きつつある中、不動産オーナーにとってはまだまだ厳しい状況が続きそうです。

 ところで、不動産オーナーが得た賃貸収入は、基本的には所得税法上の「不動産所得」になります。しかし、不動産の貸し付けが「事業規模」であれば事業所得となり、税務面で大きなメリットを享受することができます。
 たとえば、賃貸用資産を取り壊した場合の費用。事業規模ならばその全額を必要経費に算入することが可能です。しかし事業規模に達していなければ、必要経費に算入できる金額が「その年の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額」にまで制限されてしまいます。
 また、賃貸料などが回収不能となったことによる貸倒損失は、事業規模であれば回収不能となった年分の必要経費に算入できますが、そうでなければ収入に計上した年までさかのぼり、その回収不能に対応する収入がなかったものとして所得計算をやり直さなければなりません。

 そのほか、青色申告特別控除によって控除できる金額が、事業規模に達していれば最大で65万円となりますが、そうでなければ最高で10万円の控除となります。
 この「事業規模」の判定基準ですが、「事業と称するに至る程度の規模」で行われているかどうかにより実質的に判断されます。もう少し具体的に言うと、貸与できる室数が、アパートやマンションの場合は10室以上、また、一戸建ての場合は5棟以上であることがおおむねの基準です。
<情報提供:エヌピー通信社>