―クルリと脳の向きを変えれば、そこは繁栄の世界―
◆“利は元にあり”を実践するヒルベン社長
 池袋で、350円の弁当(ヒルベン)を売る店がある。その売れ方は、並みの売れ方ではない。発売時刻の前から行列ができ、アッという間に売れてしまう。
 うまい上に量も文句なし。そして何より安い。500円でも安い、と言いながら、“ヒルベン350“ の山は、たちまち消えてなくなる。どうして、こんなに安くできるのか?
 汗だくで陣頭に立つ社長は、“何も秘訣はないが”と言いながら語る。
「うちはねえ。まず仕入れが真っ先なんだ。多くの弁当屋さんは、“まず何を作ろうか”というメニューづくりから始めるんじゃない?しかしうちは、何よりも先に市場に飛ぶ。
 そして、安い食材を仕入れるんだ。野菜類なんか、一日一日相場が大きく変わるからねえ。
 こうやって仕入れた食材を前にして、そこでメニューを考えるんだ。
 メニューから考えたんじゃ、安い食材の仕入れはムリだろう。
 ほら、昔から“利は元にあり”と言うじゃないか・・」
 雑駁(ざっぱく)なような親方の言葉だが、斬新な考え方や着眼点が煮詰まっている。
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 成長とか繁栄という、前進経営から見放されたような経営者の多くに共通するのは、販売には力を入れるが、仕入れとか原価管理に力を入れることを忘れているようだ。
 前方にはカッと目を見開くが、後ろにはまるで神経を注ごうとしない。
 そういう見方、考え方に気付くことは、発想の転換につながる。