●「人と金を動かす手紙」・服部嘉香(早稲田大学教授)

1、労をいとわず、ただ誠意一つである。 心をこめた自然のありのままが良い。

2、返事は即座に。 適切に、機会を逃さず当意即妙に。

3、巧遅の文より、拙速の文を。 拙速より巧速の文を。

4、名文よりも達意の文、達意の文よりも誠意の文を。

5、長文よりも簡潔に、ただの簡潔よりは簡密に。

6、怒って書くことなかれ。 笑って書けば笑われる。

7、候文か口語文かは、相手と事柄次第で分かれる。(今日候文ほとんど用いられない)

8、用語は平易を第一とし、清新第二、風趣第三のこと。

9、文字は敬慎を第一とし、才気は第二、妙趣は第三。

10、書式や礼法を知らぬは恥、知って守らぬは愚かである。

 

●「厄難突破」・雨宮敬次郎(明治時代の実業家)

いわゆる人生行路というものは、日和続きとは限らぬ。雨の降る日もあれば、風の吹く日もある。いちいち、天気の悪いのをかこっていては始まらない。世の中がこちらの思いどおりに運んでいたら何も言うことはないが、あまり面白味もなくなってしまう。

人生の味わいというものは、天気のいい日もあれば、悪い日もあるという具合で、その凹凸にあるもの。

というわけで、だれでも一生に一度や二度は、必ず大厄難に襲われるものと覚悟するがいい。ことに大事業をやろう、大金持ちになろうと志した場合、何度でもこの大厄難を乗り越えて見せるぞという覚悟が必要だ。

ある人が若い頃不治の病と言われた、肺病にかかったが、持ち前の根性で、「何クソ!」という覚悟でいたら、肺病まで私の体から去っていった。

(注記)

雨宮敬次郎は、甲斐国山梨郡牛奥村(現在の塩山)生まれである、軽井沢に「雨宮新田」という地名があるが彼の名から取ったものだ。現在の「日本製粉」という会社も彼が興したものだ。現在の「江の電」社長に就任するなど、事業の幅を広げた。

炭火ひとつで、人間を見分けるなど、大きな着眼と細かな神経の人だった。

人が訪ねてくると、「客が火鉢の火を灰で囲むようにして帰ると、見所のある人間」として評価していた。大人物として後世に名を残した。