◆態度が変わらない人は、何も変えられない
外国のある宗派の教えに、こんな言葉がある。
「心が変われば 態度が変わる
 態度が変われば 行動が変わる
 行動が変われば 習慣が変わる
 習慣が変われば 運命が変わる
 運命が変われば 人生が変わる」
宗派に関係なく、自己を客観視するのに、じつにいい心の養分になると思っている。
私はあと1行を勝手につけ足している。
「心が変わらない(変えられない)人は、何も変わらない(変えられない)」

ある会社の幹部の一人が、その会社を辞めて独立した。
追い風に吹かれて、毎年売上を伸ばしていった。
従業員も増え、社長!社長!と呼ばれ、この幹部はすっかり社長業に馴れ過ぎてしった
やがてゴルフもやるようになった。前の会社時代から、目をかけていた部下も呼び寄せ、専務に据えた。すると社長はふだんの日でも、留守が多くなった。
会社はこの専務に任せ、毎日のようにゴルフ三昧。
この社長の会社は、いま経営危機の真っ只中にある。
それでもこの社長は、過去のよき時代の経営手法を変えようとはしない。いや、過去のよき時代の体験に縛られ、変えられないでいる。まさに自縄自縛そのものである。

◆“不易流行”とカメレオン型の経営者
この言葉はもともと芭蕉の俳諧用語である。
不易とは、変わらないこと。どんなに時代は移ろえど、変わらぬもの変えてはならぬものもある。しかし同時に、変わるもの、変えるべきものがある。これが、“不易流行”である。
しかしここでは、“流行”の実践に的を絞ってみたい。
上に紹介した社長は過去の体験に執着していたが、このタイプの人は、“しがみつき”で共通している。いまの業界から飛び出して、新天地を求めるべきなのに、それがやれない。
“自分が乗っているのは、どっちみち沈む泥舟”という自覚がないのだ。
ところがある酒店の経営者は、「このまま泥舟に乗っていてもダメだ」と決意した。そして考えた。「菓子を作ろう(外注)」と思った。作っても売れなければ製品倒れになる。
そこで考えたのが豆菓子である。ただの豆菓子じゃない。では何が違うのか。
ネーミングが違うのである。なんと「ゴリラの鼻くそ」。
「このまま酒にしがみついていては、自滅するだけだ。「豆を使った甘納豆なら素人の自分にも作れるのではないか?」。こう自分に言い聞かせ、黒大豆を原料に挑戦したのである。
そして、『ゴリラの鼻くそ』のネーミングで売り出したら、多くの動物園にはゴリラがいる。そういう動物園が、一斉に“おみやげ”として扱いはじめた。東京の上野動物園でも売っている。あの旭山動物園でも、愛知県のモンキーセンターでも売っている。
累計で300~400万袋が売れたという情報もある。(一袋500円)
この酒店の経営者こそ、カメレオンそのままに、環境適応型の発想に自分を変え、成功した人と言えよう。環境不適応のしがみつきは、わが身を滅ぼすだけである。