●成功経営者の発想は、まるで逆
 トステムという会社がある。昔は東洋サッシと呼んでいた。
 この会社はいま、年商4千億以上、従業員数約9千名で、東証1部に上場している。
 この会社を作った人は、潮田健次郎さん(前会長)である。
 創業時の業種は、「妙見屋商店」という建具屋さんだった。これが1923年頃。
 1949年にサッシづくりの第一歩、日本建具工業(株)という会社を設立。
 こうしてサッシ製造を始めたが、最初の10年間は、ひどい借金苦の連続。
 潮田さんによれば、「借金王」だったと称して、自伝に紹介している。
 「売り上げは1200万円程度なのに、赤字が3600万円ほどまで累積したこともある。
 経理の帳簿を見るときは、胸がドキドキして、深呼吸をしてから見たものです」
ところが10年もたった頃、ヒット商品が出たこともあり、財務にも余裕が生まれ、潮田さんも、ホッとひと息つけるようになったという。
 そこで潮田さんは、一体どんなことを考えたのか。
 「これからは、少々自分が会社を留守にしても大丈夫。今後の事業展開のことを考えると、もっと勉強しなければと考え、日本生産性本部(現・社会生産性本部)や、日本能率協会が主催する経営者セミナー(勉強会)に通うことにしました」
 多くの経営者は、お金に余裕が出てきて、自分が少々会社を留守にしても大丈夫と思うと、「さあ、ゴルフでも始めるか」とか、「妻と一緒に海外旅行でも行くか」などと、遊びや娯楽の方向で考えるものではないのか。
 ところが潮田さんは、「さあ、今のうちに勉強せねば」と考えた。
 成功を収める人というのは、考え方がまるで違うようだ。

●排気量の大きな脳は、判断力にゆとりがある
 勉強した人と、勉強を怠けた人は、一体何がどう違うのか。
 道が二股に分かれている。A道路は舗装道路、B道路はでこぼこ道。
 そこにやって来た甲乙の二人。どっちに進むか選択(判断)を迫られる。甲は、迷うことなく舗装のA道路の方向に進むことにした。乙はこの辺の地理を勉強しており、A道路の1キロ先は工事中のため、迂回が必要なことを知っていたから、外見にとらわれず、でこぼこ道を選んだ。1キロも歩けば、大きな幹線道路に連絡していることを知っていたからだ。
 その結果はどうなるか。いうまでもなく甲は、見通しの失敗で躓いた。
 勉強をして、能力という排気量を大きくしておくと、毎日毎度の物事の判断において、先を読んだ“ゆとりのある判断”ができるものだ。
 不勉強な人は、考え方が浅い。目の前しか見えない。
 テレビで、成功して儲かった経営者の豪華な家屋敷を、テレビが紹介する番組があった。以前は、そのガイド役を故宮尾すすむがやっていた。その彼が語っていた。
 「3年もして、かつての金持ちを訪ねると、半分以上が没落してるんです」
勉強しないと、考え方の底が浅いから、簡単に干上がってしまうようだ。
 一般には、自分の業界のことしか知らない人は、どうも勉強の足りない人が多いようである。勉強する人は、他の業界の動向にも、大づかみで情報に通じているものだ。
 客の多くは他業界の人だから、他業界にも通じておくのは当然なのに、そこが空白なのだ。