~独立経営の薬局、薬店、化粧品店、自転車店、食堂、八百屋さん・・量販店とは異なる発想で勝負すべきなのに~
●ハートでつながってこそ専門店の生きる道
 自分の店は専門店(個人経営が多い)であるのに、競合する量販店をはじめ、自店を囲む厳しい競争環境だけを過剰に意識したまま、自店独特の魅力を打ち出せない店が多い。
 そういう経営者に限って商売は、じり貧経営が多く、「環境が悪い」、「大量仕入れの量販店の低コストには勝てない」、「資本力による大バーゲンには勝てるはずがない」・・などと、自分の経営努力や知恵は棚にあげ、泣き言を並べる人も少なくない。
 そういう人は、専門店の本質を理解しないまま、過去からの習慣を引きずった人が多い。
「八百屋さんあんたが売るから買うんだよ」という川柳があるが、これは八百屋の主人という“人”に客がついていることがわかる。
 このほかに、「俺のこと親よりくわしい商店主」とか、「金忘れいつでもいいよと店の声」というのもある。かと思うと、「名物は商品よりも店の人」とか、「商店街ピンチじゃないよチャンスだよ」というのもあれば、「祖母と来て妻と買い物いま孫と」というのもある。
 客と店とが、温かいハートでつながっているのが、よくわかる。
 「祖母と来て・・」などは、親子何代にもわたって、同じ店を贔屓にしているのが伝わる。
ほのぼのとした、客と店のつながりが、伝わってくる。
 じり貧の専門店の多くに共通するのは、こういう“ほのぼの感”が感じられない。
 川柳の題材になるような専門店には、概して、次のような接客が自然体でできる店が多い。
「ところで、お宅のハイカラおばあちゃんはお元気なの?」(小間物店)
「奥さん、お宅のサキちゃんも、早いもんでもう高校だねえ!」(衣料品店)
「ところで旦那さん、交通事故に遭ったんだって・・」(食料品店)
「立ち話もなんだから、いま椅子出しますからねえ・・」(漢方薬店)
「この薬も、お使いいただくようになって、もう5、6年はたちますかねえ・・」(薬局)
「この白菜漬け、お宅のご主人の好物だからねえ・・」(八百屋)
 ところがじり貧店の場合、接客は通り一遍とか事務的。店はヒマでも、客を店頭まで見送ることもしない。薬局商売なら、「では、お大事にして下さい。ああ、そうそう、肺炎球菌の予防注射しました?」などという心遣いが、自然体で言葉に出てこそ・・専門店ではないのか。