●発想の転換には、習慣の転換が先行すべし
 トップ交替で業績が回復するのはなぜか。それは簡単だ。“発想や判断”が変わるからだ。
 ところが中小企業は、株式公開の大企業が大衆の会社(パブリック・カンパニー)であるのに対して、会社はおれのものだ(マイ・カンパニー)という、資本と経営の一心同体企業だから、ここに問題がある。
 ということは外部の者が見て、「この会社は、ここが問題だ」と、客観的にメスを入れるべき死角を把握しても、「当事者でない人間が何を言うか」といって、経営者は耳を貸さない例が多い。
「その戦略は危ない。こうしたほうがいいのに・・」と助言しても、経営者は、「いやそうじゃない、おれの考えがいちばんなんだ」といって、行く手に地獄が待つ方向に突き進む。
こういう問題は、中小企業には昔もいまも、わんさとある。
 では、業績が停滞した中小企業の場合、どうすれば業績の回復が可能なのか。
いうまでもなく経営者自身が、「過去と訣別し、発想と判断基準を変えること」にほかならない。
 ところが、これがなかなかむずかしい。
発想の転換に成功した人には、まず習慣の転換に挑んだ人が多い。
経営者の発想転換に役立つ習慣の転換を、先人の例から紹介しよう。
  ?マイカー通勤を週2電車通勤にした。
  ?従業員の家庭訪問を始めた。
  ?幹部会議に、男女の一般社員を交替で参加させるようにした。
  ?外部に依頼して、社員の勤務意識調査をした。(「あなたは、今後も末長く会社で働きたい
   と思いますか?」というような質問をする)
  ?異業種に人脈を求めるため、セミナーに参加するようになった。
  ?初めてミュージカルを見にいった。
  ?毎週1回を自転車で通勤するようにした。
  ?社内に、“社長への直通ボックス”を配置し社員の直訴を受けるようにした。
  ?課長以上の幹部を毎月、2名自宅に呼び夕食を共にするようにした。
  ?出張先では、その地方の新聞を読むようにした。(いままでは読み馴れた新聞に固定して
   いた)
                                      
【例】ある社長は毎週1,2回を、マイカーをやめ電車通勤に切り替えた。
 ところがある日車内で、サラリーマンたちの雑談を耳にした。
「“午後の紅茶”という商品ね、あれは女子社員が思いついたんだ。その新商品を、最初ダメだといった上司は、これがヒットしてから、大いに自分を反省したというんだ・・」
自分自身にも、“女の子が・・”という多少侮りの意識があり、有能だと思っていても、女性を部課長にすることをためらっていた。が、それから数ヵ月後に、この会社にも一人目の女性課長が誕生した。
 金属加工業のこの会社でも、女性たちの提案で、台所用品の新商品が生まれ、しかも採算商品として会社の業績に寄与するまでになった。それ以上に会社の活気が、以前とは比較にならないくらい、生き生きしてきた。
社長がもし電車通勤をしなかったら・・・。