しかしこのことは、単に納税額だけの話ではなく、無申告であったことが大きな問題です。

 新聞でも報道されましたが、「仮想隠ぺい」がなければ2002年分と2003年分が時効となって贈与税の一部が返還されるという話です。

 税法的には、「偽り不正」すなわち、脱税の意思をもって偽計その他の工作をして、税の課税徴収を不能もしくは困難ならしめる過少申告や無申告をするということがなければ、国税債務の時効期間は5年であり、最長の7年に延びるということはありません。

 おそらくは、“納めるものは納めてしまって”という方向であることから、大きな仮想隠ぺいや偽り不正はないのだとは思われますが、国のトップ、徴税をつかさどる省庁のさらに上の首相がこういったことでは、なんとも示しが付かない話です。

 当初、母親から首相への「貸付金」という方向で処理を図りましたが、借用書もなければ、元本も利息の支払いもないというお粗末な実態から贈与に切り替えたという経緯に鑑みても、言い訳の余地はなさそうです。

 鳩山家にとっての贈与税の負担は、十分な支払い能力のあるお金持ちであるだけに、諸問題を解決するための一手段に過ぎないと捉えれば大きな負担ではないかもしれません。

 しかし、逆に、お金持ちであるがゆえに、「贈与税の支払義務を知らないということはありえない」となれば「脱税」との批判は避けて通れませんし、金額的な負担以上に信頼失墜という大きな負担があるのかもしれません。(了)