最近、水ビジネスに関する記事が増えてきているように感じられますが、それは日本が築き上げてきた高度の水道技術を背景にした、主に新興国向けのインフラ整備の記事であるように思われます。

 経済の発展に外国の民間資本を活用してきた新興国からすれば、本来、国家の事業とされるインフラ整備にも民間資本を取り込むことに違和感は覚えないのでしょう。一方、国内に目を向けると、水道事業(水道事業は大きく分けて、上水道事業と下水道事業に分けられますが、ここでは上水道事業を指すものとします)は、建設については民間の技術を活用するものの、管理・運営については、原則的に地方自治体が行ってきました。裏を返せば、建設・管理・運営の全てを行う機関はなかったのです。それがゆえに、民間資本はなかなか入りませんでしたし、スケールメリットを享受する事業に発展してこなかったということができるでしょう。

 今や、水道の普及率は97%を超え、日本全国どこへ行っても蛇口をひねれば水が出る状態となっています。今後の水道事業は、設備の新たな敷設というよりは、老朽化した設備の修繕・更新といった方向に向かうのでしょう。すなわち、インフラ整備という意味では、国の(地方公共団体の)役割は終わったように思われます。(つづく)

(記事提供者:アタックス 林 裕人)