消費税の免税事業者である個人が、事業収入を前年の相続に関する遺産分割の結果に基づいて改めて判定すると1千万円超になった場合、消費税の納税義務がないものとして扱うことは間違っていないかという照会に対して、東京国税局が文書回答をまとめました。

 この事例では、相続人はAとその妹で、被相続人は兄妹の母。全員が個人事業者で、営んでいる事業はAが農業と不動産賃貸業(貸店舗)、母も同じ事業、Aの妹は不動産賃貸業(駐車場)。平成23年4月に母が死亡し、24年2月にAと妹とで遺産分割協議が成立するまでの間、母が営んでいた農業と不動産賃貸業は2人の共同事業としていました。協議成立後は母の事業をAが全て承継することになりました。
 Aと妹の事業収入(課税売上高)は平成21・22年分課税期間、いずれも1千万円以下で、これらの年分を基準期間にする平成23年分(相続があった年)と24年分は2人とも免税事業者でした。しかし、相続で一定規模以上の事業を相続したため、平成23・24年分に掛かる消費税の納税義務の有無を判定することになったものです。消費税基本通達1-5-5「共同相続の場合の納税義務」を適用して、母の平成21・22年分の課税売上高を法定相続分(それぞれ2分の1)で按分して判定した結果、2人は両年分とも免税事業者でした。
 その後Aは遺産分割協議の成立で母の事業を全て承継しました。民法では、遺産の分割は相続開始時に遡ってその効力が生じることになっていますから、Aは相続があった日に母の営んでいた事業の全てを承継したことになります。

 遺産分割の結果に基づき、平成23・24年分の消費税の納税義務の有無について再度判定すると、母の課税売上高を按分して計算したときとは異なり、全てを承継したことでいずれの年も課税事業者に該当することになってしまいます。この場合も免税事業者に該当するものとして取り扱えるのかというのが照会の内容です。
 これに対して当局は、消費税の納税義務者に該当するかどうかは事業者が事前に予知しておく必要があること、相続財産が未分割の場合における納税義務の判定方法は示されていること――を理由に挙げ、当初の判定どおり免税事業者として取り扱うと回答しました。
<情報提供:エヌピー通信社>