コップ一杯の水を見て、ある人は「水はまだ充分ある」と考え、またある人は「水は少ししかない」と考えます。
同じコップ一杯の水、しかし、人によって、立場によって見方は180°変わってしまいます。それは、コップ一杯の水に何を期待するかによって変わるとも言えます。普通に飲み水と考えるならば、コップ一杯の水で喉の渇きを癒すには充分ですが、洗濯するには少なすぎます。同じ飲み水でも、炎天下での運動の後ではコップ一杯の水では喉の渇きを癒すにも不充分です。また、見る人の性格によっても、生まれつき楽天的な性格の人、悲観的な性格の人では見方が異なります。たかがコップ一杯の水、目の前の事実は同じなのに、人によってこれほど見方が違うというのは何だか不思議な気がします。よく、真実は一つと言いますが、それを見る目は人毎に分かれます。コップ一杯の水ですら、これほどに見方や考え方が分かれるとすれば、「会社」に対する見方や考え方がバラバラなのもうなずけます。「会社」に対する見方、考え方が統一されれば、多くの経営者が抱える苦労の一つが劇的に軽減されるはずです。
ヒト・モノ・カネのうち、ヒトに関する苦労の中には、採用が困難である、採用しても人が定着しない、世代交代が進まない、有能な人材が少ない・・・etc様々な苦労があります。しかし、何といっても、皆の意思統一を図り、皆のベクトルを合わせることが一番難しいことかと思います。「百年に一度」の未曾有の経済危機の中、皆で危機感を共有し、力を合わせなければこの危機は乗り切れません。経営者一人が孤軍奮闘するだけでは、この危機を乗り切ることは困難です。そんな危機の中、コップ一杯の水を見て、それぞれが勝手な解釈をしているようでは、とても「会社」のベクトルを合わせることなど期待できそうもありません。
今、「会社」は存亡の瀬戸際に立たされているとも気づかず、各自が、オレはそこそこ頑張っているから大丈夫だろう、昔も大変な時があったけれども何とかなったので今度もたぶん何とかなるだろう、止まない雨はないから、そう焦らなくともそのうち景気も良くなるだろう・・・etc。同じ「会社」にあって、会社の現状認識すら統一できないまま、いたずらに時は過ぎ、危機は足早に間近く迫ります。そうなってからでは遅すぎます。そうなる前に、「会社の現状」に対する共通認識を確立することが必要です。
コップの中の嵐のようにいつまでも社内がバラバラなまま、問題を先送りし、責任転嫁を繰り返すだけでは組織の力は発揮できません。