小倉昌男さん、いうまでもなく“宅急便”を生み出した、ヤマト運輸の元経営トップです。
 小倉さんは、宅急便を完全に成功軌道に乗せたあと平成七年に会長を辞任するや、今度は私財を投じてヤマト福祉財団を立ち上げ、社会貢献に身命を賭けた人でもあります。
 この小倉さんが、のちにお書きになった「経営はロマンだ」(日経新聞の「私の履歴書」の文庫版)のまえがきに、こう書いていらっしゃる。

「目的を決める。目標を掲げる。実現するための方法を考える。経営とは考えることである。
 でも考えてもわからないことがある。そのときはやってみることである。やってみればわかることが多い。こうやって試行錯誤しながらすすむ。
 経営はロマンである。だから経営は楽しい。目標を決め方法を考え実行する。この間の緊張は堪らない

 短文ながら、一字一字がずっしりと重い。
 たとえば一般家庭対象の市場調査というと、大手広告代理店や調査専門会社を使うところが多いなか、小倉さんは、自分で考え自分で采配し調べています。
 「これはおかしい?」と思うことには、闘いも挑みました。この優しい人情厚い小倉さんが、「規制行政が、すでに時代遅れになっていることすら認識できない運輸省(当時)の役人の頭の悪さには、あきれるばかりであった」とも書いている。
 「私は大阪を訪れた時に、大手ライバルの支店をこっそり覗いてみた」
 これぞ、小倉さんの市場調査の一環です。

(小倉さんは平成17年6月、80歳で逝去。合掌)