ある銀行主催のセミナー会場でのこと。「コスト管理」の講座をしばらくのぞいてみた。
 しかし、こんな講座をまじめに受講するようじゃ、コスト管理の実効を手中にはできないと思った。
その理由は、午前の講座が終わるや、講師も受講者も一斉に、昼食をとりに食堂に出かけたが、皆が出かけたあとは、消灯もしない照明が、こうこうと無人の教室を照らしていたからだ。
「わたしが講師なら、“原価管理は身の回りから、照明を切ってから・・”と指導する」と。
身近な照明を無駄に全開したままで、コスト管理を論ずるのは、ナンセンスもはなはだしい。

 コスト(原価)を、数字だけでとらえるのは、生きたコスト管理にはならない。
コストやムダの多くは、人間の行動から生まれるものである。だから、人の動きにコスト管理を求めない考え方は、現実的な管理とは距離が生じる。
一例をあげれば、出社早々グズグズする人や、タクシーを降りるときになって財布を出すくせのある人や、車を運転して曲がる場所に差しかかってからシグナルを倒す人は、計画性に欠ける人である。
こういう人の動きにはムダが多く、ハイコスト&ロープロフィット(高い原価で低い生産性)な働きしかできない人である。役所の多くには、こんな人間がゴロゴロして、働くというより動いている感じがする。

 下表には、原価を押し上げ、仕事効率を落とす、主要な原因を紹介した。
「だったらどうしたらいいか?」には、ここで触れていない。各社で知恵をひねって欲しい。

原価を押し上げ、仕事効率を落とす元凶
   ?朝の職場がグズグズしているほど・・・→ 原価(UP) 効率(DOWN)
   ?仕事のやり直しが多いほど・・・・・・・・・・→   〃      〃
   ?苦情の多い仕事が増えるほど・・・・・・・・→   〃      〃
   ?客のホンネを知らない職場ほど・・・・・・・→   〃      〃
   ?よぶんな手間をかける仕事ほど・・・・・・・→   〃      〃
   ?仕事の手順が場当たり的なほど・・・・・・→   〃     〃
   ?営業マンの巡回経路がヘタなほど・・・・・→   〃      〃
   ?仕入れ価格が高いほど・・・・・・・・・・・・・→   〃      〃
   ?会議が多い会社ほど・・・・・・・・・・・・・・・→   〃      〃
   ?不良率が高いほど・・・・・・・・・・・・・・・・・→   〃     〃
   ?固定費が多いほど・・・・・・・・・・・・・・・・・→   〃      〃
   ?管理者の能力が低いほど・・・・・・・・・・・→   〃      〃
   ?部下のミスを是正しないほど・・・・・・・・・→   〃      〃
   ?右脳的な柔軟発想に欠けるほど・・・・・・→   〃      〃
   ?新しい仕入れ先を開拓しないほど・・・・・→   〃      〃
   ?新しい得意先を開拓しないほど・・・・・・・→   〃      〃
   ?新製品を開発(導入)しないほど・・・・・・→   〃      〃
   ?社長の心が浸透しないほど・・・・・・・・・→   〃      〃
   ?「原価意識」が不徹底なほど・・・・・・・・→   〃      〃
   ?五年先の変化を考えないほど・・・・・・・→   〃      〃