◆ワンポイント経営は、突風に弱い
 釣り好きな人は、竿を選び、仕掛け、投げ、合わせと、次第に凝るようになる。
 しかし、どんなにいい道具を揃え腕を磨いても、魚が多くいるところ(ポイント)でないと、釣れやしない。そのかわりポイントさえピタリと合えば、未経験者でも結構釣れるそうだ。
 経営も同じようなもので、ポイントさえピタッと合えば、ホイホイと儲かる。
 ところが、遭遇したポイントがベリー・グッドなものだから、そのポイントだけにのめり込み、“ワンポイント経営”を続けてしまうことになる。
 たとえば、生産財(企業向け)がポイントだとすれば、民生品には見向きもせず、ワンポイント経営を、ついつい続けてしまうことになる。
 そこに、突然変異型の不況が、投網をかぶせるように襲ってくる。するともう逃げ場がない。セカンド・ポイントを持たないものだから、やられっ放しになるしかない。

◆〈2ポイント経営〉に進化しよう
 だから今後は、生産財をメインにしてやるならやるで、同時に社内シェアは少なくてもいいから、民生品も育てるのだ。もし主ポイントが服飾品なら、必需品も扱うことを考える。
 業態(売り方)も、営業マンによる売り方を主にしているなら、ネット販売も整備し、2通りの販売ルートを開発しておく、というように考えることだ。
 人生にも経営にも、「まさか!」というピンチは、2度や3度は訪れるもの。
 〈最悪を予測し、最善の手を打っておけ〉と、〈一つの道にのめり込む危険〉を、バランスのよい意識として併せ持ち、今回の不況を教訓にしたいものだ。
 一本だけの丸木橋の“ワンポイント経営”から、〈2ポイント経営〉に移行しよう。
 しかし賢い危機管理は、平時に考えてこそ、いい知恵が生まれる。
 しかも、平時に“乱の訪れ”を予想することこそ、社長らしいところでもある。