25.07.03 海外勤務者(非居住者)に支給する退職金に対する課税
(質問) 
数年前から来年3月までの予定でドイツ勤務中の社員が海外勤務のまま退職することになりました。退職者に支給する退職金に対する源泉徴収について教えてください。
 
 (回答)
1.原則的な取扱い
所得税では、海外支店等の勤務で継続して1年以上国外に居住する者は、非居住者として取り扱われ、非居住者に支払う退職手当等は、その非居住者が居住者であった期間の勤務に対応する部分について20.42%の税率により所得税を源泉徴収しなければならないとされています。
したがって、その退職手当等が居住者としての勤務期間と非居住者としての勤務期間とを合算した期間に対して支払われるものである場合には、その退職手当等の額を居住者であった期間に対応する部分と非居住者であった期間に対応する部分とに按分して、課税対象となる金額を算定しなければなりません。
① 課税対象となる退職手当等の額は次の〔算式〕により計算します。
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     ② 源泉徴収する金額は
課税対象となる退職手当等の額①×20.42%となります。
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   (注意点)
(1) 退職の日
ここで注意しなければならないのは、退職所得の収入金額の収入すべき時期は、その支給の基因となった退職の日によるもの(所得税基通36-10)とされている点です。
そのため、海外赴任中に退職した場合、帰国してから退職金が支払われたとしても、非居住者(海外赴任中)に対する退職金として取り扱われることになります。
(2) 外国勤務に対して支給された退職金に対する、外国での課税
なお、外国の居住者である期間に退職して日本から退職金を受取った場合、その国の所得税が課税される可能性があります。
 
2.例外的な取扱い(退職所得についての選択課税)
ただし、非居住者本人の選択により、今回の退職に基づいてその年中に支払われる退職手当の総額を居住者が受けたものとみなして、居住者と同様の課税を受けるということも認められています。
この特例は、国外勤務等をして退職する者と国外勤務をせず国内勤務だけで退職する者との税負担が不公平にならないようにと設けられている制度で「退職所得についての選択課税」といわれているものです。
 
3.退職所得についての選択課税を受ける場合の具体的な処理
非居住者が、「退職所得についての選択課税」を受ける場合には、次のような取扱いをします。
①会社の取扱い
会社は、非居住者が「退職所得についての選択課税」の適用を受ける場合であっても、退職手当等を支給する際には、上記1の算式により計算した20. 42%の所得税を源泉徴収し、これを納付しておかなければなりません。
②非居住者の取扱い
非居住者が「退職所得についての選択課税」の適用を受けようとする場合は、その退職手当等の支給を受けた翌年1月1日(その日までに、その年中の退職所得の総額が確定したときは、その確定した日)以後に、税務署長に対して所得税の確定申告書を提出します。
この時に計算された所得税額から源泉徴収された税額を差し引き、差額を還付してもらうことになります。
(退職所得に対する課税方法)
居住者の退職所得に対する所得税については、
①勤続年数に応じた退職所得控除を控除する
②退職所得控除後の退職金の2分の1が課税対象となる
③給与所得など他の所得と分離して課税される
といった優遇措置が設けられています