1.0 贈与とは

1.1 贈与とは

「贈与」は、自分の財産を無償で他人に与えることを言います。

したがって、一方的に与えるということだけで贈与が成立したことにはなりません。

贈与する人が「自分の財産をタダであげる」という意思を贈与を受ける人に対して表明し、もらう人がこれを「承諾する」ことによって贈与は成立します。

贈与する人を「贈与者」といい、贈与を受ける人を「受贈者」といいます。

 

1.2 贈与の成立

贈与によって財産が移転すると贈与税が課されることになりますが、相続税対策で贈与を行った場合、税務上、本当に贈与があったかどうかが問題とされることが多くあります。

 

1.3 生前贈与をする場合のポイントとしては

(1)       贈与によって財産が移転した証拠を残す

    預金口座を経由する

夫婦や親子など同居者や近親者の間において行われる金銭等の贈与は契約書を作成して行われることが少なく、また、作成しても形式的なものにすぎないことが多いので、贈与したのか、名前を借りただけなのか、または金銭消費貸借(貸付)であるのかの判定がむつかしくなります。

そこで、贈与の事実を明らかにするためには贈与契約書を作成すると共に、贈与の事実があったと認められる状況を残すようにすることが大切と考えます。

具体的には、

例えば、父から子に現金を贈与する場合、父の銀行預金口座から子の銀行預金口座に振替で移し、預金通帳に移転の足跡を残す方法。

 

    その上で、贈与税の申告をする

 

(2)       贈与財産の管理などは受贈者が行う

子供に現金を贈与した場合に、通帳も印鑑も贈与した父母が所持したままで、贈与を受けた財産を自由に処分できない状況にある場合には、贈与による財産の移転があったとは認められません。

贈与により財産が移転したのであれば、贈与を受けた者はその贈与された財産の使用・処分は自由にできるのが原則です。

従って (1)の例のような場合には、通帳も印鑑も受贈者(子)に渡し、贈与者(父)は贈与した財産にタッチしないと考えてください。

つまり、現預金・有価証券などの名義だけを父から子に変えただけで、財産は贈与者(父)が引き続き管理しているような場合において、父の相続が開始した時には父の相続財産で子の名前を借りただけ判定されて相続税の課税対象となると考えてください。

 

(3) 贈与税は受贈者が納付する
    贈与税は贈与された者が納付するのが原則です。

贈与した親が贈与税の肩代わりをすると、支払った贈与税相当額もまた贈与税の対象となります。贈与税の立替払は贈与とみなされるか、相続時には立替金として相続財産として課税の対象となります。