相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱いが変更になりました

 平成2276日に、最高裁判決において、年金として受給する生命保険金のうち、相続税の課税対象となった部分については、所得税の課税対象とならないとする判決があったことを受け入れて、国税庁は10月1日「相続又は贈与等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱いの変更等の方向性について」を発表し、続いて、1020日に「相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の 取扱いの変更について」が公表されました。

1.取扱いの変更内容

⑴ 対象者

相続、遺贈又は個人からの贈与(以下「相続等」といいます。)により取得したものとみなされる生命保険契約や損害保険契約等に基づ年金を受給している方が、今回の取扱いの変更の対象となります。

() 相続等により取得したものとみなされる生命保険契約や損害保険契約等に係る年金の受給権は、相続税や贈与税の課税対象となっています。実際に相続税や贈与税の納税額が生じなかった方も対象となります。

 ⑵ 取扱い変更後の所得計算

取扱い変更後の所得計算については、「相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の雑所得の金額の計算書」で計算を行うこととなり、国税庁ホームページに掲載予定(1025日の週)の「保険年金の所得金額の計算のためのシステム」では、年金情報等を入力することによって自動的にこの計算書が作成できる予定です。

(3) 保険年金の税務上の取り扱いの変更

 ①変更前

各年の「保険年金」の所得金額(年金収入額-支払保険料)全額に所得税を課税していました。

②変更後

各年の「保険年金」を所得税の課税部分と非課税部分に振り分け、課税部分の所得金額(課税部分の年金収入額-課税部分の支払保険料)にのみ所得税を課税する。

  ()保険年金に対する源泉税

源泉対象金額(年間の年金収入金額から対応する支払い保険料を控除した金額=25万円未満の場合行わない。)の10%で行う。

       2.所得税の課税において保険年金の金額に係る課税部分と非課税部分の計算方法

① 年金支給初年は全額非課税とする。

② 2年目以降の年金の取り扱い

非課税部分が同額ずつ階段状に減少していくという簡易な方法により計算します。なお、課税部分に係る所得金額は、課税部分の年金収入額から対応する支払保険料を控除して計算します。

  ③ 計算手順の例 

   A 年金総額を計算

   B 年金総額のうち課税部分を計算

   C 課税部分を各年に対応した1単位当たりの所得金額を計算する。

「この課税部分と非課税部分の計算方法は、定額払いの確定年金に限らず、終身年金や有期年金、逓増型や逓減型などの年金種類や支払方法、さらにはその支給期間にかかわらず用いることができる」とのことです。

(参考)保険年金の課税・非課税部分の振り分け(国税庁HPより)
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(計算例)支払期間10 年の確定年金を相続した方の支払年数5年目の所得金額の計算

(年金年100 万円定額払い、保険料総額200 万円の場合)

① 1課税単位当たりの金額:

1,000万円 × 40% ÷ 45マス 8.8 万円

(課税部分)   (課税単位数){10 年×(10 年-1年)÷2}

② 課税部分の年金収入額:

8.8 万円 × 4年 = 35.2 万円

(経過年数)支払開始日からその支払を受ける日までの年数

③ 必要経費額:

35.2 万円 × 200万円 ÷ 1,000万円  7 万円

(保険料総額)  (支払総額)

④ 課税部分に係る所得金額:

35.2 万円 - 7 万円 = 28.2 万円