24.01.11 .個人が災害により資産に損害を受けた場合の取扱い
Ⅰ 東日本大震災により被害を受けた個人に関する所得税等について
1.所得税の軽減又は免除
大震災により住宅や家財などに損害を受けた方は、下記どちらか有利な方法で、所得税の軽減又は免除を受けることができます
① 所得税法に基づく「雑損控除」(損害金額に基づき計算した金額を所得から控除する方法)
② 「災害減免法」に定める税金の軽減免除による方法
なお、大震災により被害を受けた方については、平成22年分又は平成23年分のいずれかの年分を選択して、これらの軽減等の措置を受けることができます
   「雑損控除」と「災害減免法」の比較


















 
所得税法(雑損控除)
災害減免法

 

 
対象となる資産の範囲等

 

 
生活に通常必要な資産
 (棚卸資産や事業用の固定資産、山林、生活に通常必要でない資産(注)は除かれます。)
(注)「生活に通常必要でない資産」とは、別荘や競走馬、1個又は1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨とう等をいい、これらの資産についての災害等による損失は雑損控除の対象とはなりませんが、その年か翌年に総合課税の譲渡所得があれば、その所得から控除できます。
住宅や家財
 ただし、損害額が住宅や家財の価額の2分の1以上であることが必要です。

 
控除額の計算又は所得税の軽減額
控除額は次の①と②の算式で計算した金額のうち、いずれか多い方です。
①差引額損失金額(損害金額-保険金で補てんされる金額)-所得金額の10分の1
②差引額損失金額のうち災害関連支出の金額
(注)「災害関連支出」とは、災害により滅失した住宅・家財を除去するための費用等です
所得税の軽減額等は次のとおりです













その年の所得金額
所得税の軽減額
500万円以下
全額免除
500万円超750万円以下
2分の1の軽減
750万円超1,000万円以下
4分の1の軽減
 

参考事項
その年の所得金額から控除しきれない控除額は、翌年以後5年間に繰り越して、各年の所得金額から控除できることとされました
・損害を受けた年分の所得金額が、1,000万円以下の方に限ります。
・減免を受けた年の翌年以降は、減免は受けられません
2.住宅借入金等特別控除の特例
大震災により住宅借入金等特別控除の適用を受けていた住宅について居住できなくなった場合についても、その住宅に係る住宅借入金等特別控除の残りの適用期間について、引き続き、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。
3.見舞金等を受け取った場合について
個人又は法人から見舞金や災害義援金を受け取られた場合には、その見舞金等がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係などに照らし社会通念上相当と認められるものについては、贈与税及び所得税の課税の対象とはなりません。
4. 個人事業者の方へ
(1)被災事業用資産の損失に係る取扱い
平成23年分において、事業所得者等の有する棚卸資産、事業用資産等について大震災により生じた損失(以下「事業用資産の震災損失」といいます。)については、その損失額を平成22年分の事業所得の金額等の計算上、必要経費に算入することができます。
この場合において、平成21年分から青色申告をしている方は、平成22年分の所得において純損失が生じたときは、事業用資産の震災損失も含めて、平成21年分の所得に繰り戻して所得税の還付請求をすることができます。
(2)純損失の繰越控除
事業所得者等の有する棚卸資産、事業用資産等について大震災により生じた損失(以下、「事業用資産の震災損失」といいます。)を有する方の平成23年において生じた純損失の金額のうち、次に掲げるものについては、5年間繰り越すことができます。
① 保有する事業用資産等に占める事業用資産の震災損失額の割合が10分の1以上である方
イ 青色申告の場合
平成23年分の純損失の金額
ロ 白色申告の場合
平成23年分の被災事業用資産の損失の金額と変動所得に係る   損失の金額による純損失の金額
② 上記①以外の方
事業用資産の震災損失による純損失の金額
(3)被災代替資産等の特別償却
平成23年3月11日から平成28年3月31日までの間に
① 大震災により滅失又は損壊した建物、構築物、機械装置、船舶、航空機、車両運搬具に代わるこれらの資産の取得等をして事業の用に供した場合
② 建物、構築物、機械装置の取得等をして被災区域(被災区域とは、大震災により滅失した建物等の敷地等の区域をいいます。)内においてその事業の用に供した場合
には、これらの減価償却資産の取得価額に、次の区分ごとに、次の償却率を乗じた金額の特別償却ができます。

















取得等の時期
被災代替資産等の区分
平成23年3月11日から平成26年3月31日までの間
平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間
(1) 建物又は構築物
15%(18%)
10%(12%)
(2) 機械及び装置
 
30%(36%)
20%(24%)
(3) 船舶、航空機又は車両及び運搬具
30%(36%)
20%(24%)
※  かっこ内は中小企業者等(「常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人」をいいます。)が取得等をする場合の償却率です。
(4)特定の事業用資産の買換え等の場合の譲渡所得の課税の特例
平成23年3月11日から平成28年3月31日までの間に、事業の用に供している一定の資産(以下「譲渡資産」といいます。)の譲渡をした場合において、その譲渡の日の属する年の12月31日までに、その譲渡資産に対応する一定の資産(以下「買換資産」といいます。)の取得をし、その取得の日から1年以内にその買換資産をその個人の事業の用に供したとき、又は供する見込みであるときは、課税を繰り延べること(繰延割合100%)ができます。
また、買換資産は、譲渡した年中に取得したもののほか、譲渡した年の前年中に取得して税務署長に届け出したものや、譲渡した年分の確定申告において、譲渡した年の翌年中に取得する見込みである旨の申告を行ったものについても、課税を繰り延べることができます
. 災害による損害に対して受け取る損害保険金
. 保険金の概要
資産の損害に対して受け取る損害保険金(火災保険等の保険金)は非課税ですが、休業保険金、家賃保険金等収入金額に計上するものもあるので、内容を再確認してください。
(1) 資産の損害に対して受け取る損害保険金は非課税です。
損害保険金は、損害額相当額を補う、実損てん補とみなされるから所得税は課税されません。
受取った保険金が建物や家財の損害額を上回っても、超過部分にも課税されることはありません。
(例えば、保険金30万円-建物簿価25万円=5万円は非課税となります。)
(2) 保険金を超過する損失は必要経費に算入する
個人事業主が、店舗などたな卸資産以外の事業用固定資産に損害を受けて、廃棄損が生じた場合に、受け取った保険金を超過する損の部分は、必要経費に算入できます。
受け取った保険金が廃棄損を上回った場合は、上記(1)により、超過額は非課税となります
(3) 収入(課税)になる保険金
棚卸資産の損害に対して支払われる保険金や業務の休止などによりその業務の利益の補償(収入に代わる性質)として、受け取る保険金は、全額が、収入金額に計上されます。
例えば、損害を被った商品に対する保険金、利益保険金、休業保険金、家賃保険金などが該当します。
. 会計処理の方法
① 事業用固定資産の損失の金額から、保険金等により補填される部分の金額を控除して災害損失金額とします。
ここで、保険金等の金額に事業用固定資産の損失の額を超える収入部分があっても、その部分は非課税となります。
(借方)                 (貸方)
    イ損失が出る場合
 未決算           250   建物(未償却残)         250
 預金(保険金)       200   未決算                  250
 災害損失(保険差損)    50
    ロ損失を超える保険金額を受け取った場合
 未決算            250   建物(未償却残)            250
 預金(保険金)        300   未決算                  250
                           事業主(保険差益=非課税)  500
  また、店主が事故などにより心身に損害を受けた場合も、受け取った保険金等は非課税となります。
② 非課税の対象とならない資産に係る損害保険金(上記1の(2))
これらに該当する保険金等は、その金額が損害額を超えるか否かにかかわらず、その全額を総収入金額に算入する必要があります。
(借方)               (貸方)
未決算                   50    棚卸資産               50
預金(保険金)        100  未決算                100
災害損失            50