前回は食べ物を頂く前に言う「頂きます」の語源について書きましたが、今回は食べた後に言う「ご馳走様」について書きたいと思います。

 去年の年末に結構ヒットした映画「レッドクリフ」にも登場した魏の曹操が、赤壁の戦いで敗走し、逃げに逃げとある山に差し掛かった時、もうへとへとで、護衛の者も一人も無く、道の先にぽつりと灯りが見える。
 これが敵の地であったなら天運と諦めて一夜の宿を頼もうと、戸を叩くと。そこには昔、曹操が小役人だった時に、罪を咎められて死にそうだった所を体を張って助命してあげた男が立っていた。
 男は驚き、中に入れると、こんな暮らしをしているがその時以来いつか恩返しができることを祈っていた。どうぞ安心してくだされ。と言って、妻に訳を話し、夜分の事とて何の食材も無いので、これから山にいって何か獲物を取って来ると言い残し、夜の山に出かけて行った。1時も探し回ったが何も見つからず、家にもどると、妻が「そんなことだろうと思っていました。」と言う。湯を沸かして置いてくださいと言う。
 程なくして曹操の食膳に美味そうな肉鍋が供された。腹が空ききっていた曹操が夢中で食べて、食後にいざ礼を言おうとしたら、夫人がいない。どうしたのかと訳を聴くと山人が涙ながらに「夫の恩人を救う事ができなければ、自分の命の甲斐が無い」と言って、自らの肉を供するよう自刃した事を継げた。
 こんな自分の為に、たった一度の行為を恩義に感じて身を犠牲にしてくれた、この者達の為にも、このまま終わってしまってはならぬと、再び力を持ち直して復活した後、夜中中山を走り回って、自分の為に食材探しをしてくれた者の事を忘れてはならぬと肝に銘じて、食後に「よくぞ走り回ってくれた」と言う気持ちを込めて「ご馳走であった」と言っていたのを、日本風に「ご馳走様」と言葉を柔らかくして言い残したということです。
 前回の話とかぶるところもあるようですが、ちょっとキモネタですね。

 寒い冬の夜お鍋を食べる機会が多いと思いますが、ちゃんと家族全員そろっているか確認してから食べましょうね。

 業務2課長 山岸